2011年05月28日

放棄試合は9-0か7-0か

 現在行われている大会で放棄試合があり、審判団から7−0という情報がありました(当事者チームのホームページによると実際のスコアは1回途中で23−0)。当チームのホームページに掲載しているトーナメント表には7−0と記載してあります。

 さて、公認野球規則の2.31でFORFEITED GAME「フォーフィッテッドゲーム」(没収試合)というのが定義されており、4.15〜4.17で様々なケースが定められていますが、9−0で過失のないチームに勝ちを与える事になっています。4.17には、「一方のチームが競技場に九人のプレーヤーを位置させることができなくなるか、またはこれを拒否した場合、その試合はフォーフィッテッドゲームとなって相手チームの勝ちとなる。」と定められていて、これがいわゆる放棄試合に該当します。フォーフィッテッドゲーム(没収試合)ですから記録上は当然9−0となります。

 少年野球など7イニング制の試合では、放棄試合のスコアを7−0とする場合が多くありますが、アマチュア内規にも、軟式野球のバイブル的存在である競技者必携(全日本軟式野球連盟)にもそのような記述は一切ありません。おそらく、9イニング制の試合で9−0だから7イニングなら7−0と考えて、公認野球規則の記述を勝手に7−0と読み替えているのだと思いますが、これは適切な運用なのでしょうか。結論から言うと、私は適切でないと考えています。もちろん、明文化されたルールがなければ、何が何でも絶対ダメというわけではありません。その運用の根拠になっている部分に正当性があれば、習慣としてそういう運用をする事は問題ないと私は考えています。問題なのは、公認野球規則で定められている9−0が何に基づいているかという事です。本当に野球が9イニングだから9−0なのでしょうか。

 The New Dickson Baseball Dictionary (Paul Dickson著)の forfeited game の項には最後に次のように書かれています。
The offcial score of a forfeited game is 9-0 because many early forfeited game occurred when one team could not field nine players.
没収試合になるケースはメンバー表の誤記、登録外選手の出場、乱闘で収拾がつかなくなるなど様々ありますが、9人揃わないというケースが多かったからというのが9−0というルールの起源のようです。つまり、イニング数とは関係なく、野球が9人で行うという事に由来しているわけです。だとしたら、7イニング制の試合だからといって、放棄試合を7−0とするのは適切な運用とは言えないでしょう。競技者必携に没収試合を7−0とする記述は無いと書きましたが、これは意図的なのかもしれません。7イニング制の軟式野球でも公認野球規則通り没収試合は(その由来に基づき)9−0とするというのが軟式野球連盟の意思だと私は解釈しています。

 ちなみに、上記 The New Dickson Baseball Dictionary はすばらしい本です。もう10年くらい使っていますが、単なる用語の解説だけではなく、由来や事例など周辺の情報が豊富に盛り込まれていて、野球界で使われる様々な言葉について調べたい時に非常に役に立つ本です。ただ難点は英語だということ。私は3ヶ国語(日本語標準語=中級、津山弁=上級、出雲弁=初級)を操りますが、英語はどうも苦手でなかなか4ヶ国語マスターというレベルに到達しません。その私でも何とか使えていますから、まあ大抵の人は問題なく使えると思います。Amazonでも購入できますから、野球オタクを自称する方(ちょっと違った観点で野球を眺めてみたい方)には是非購入をオススメします。

 更にもう一冊オススメなのが「わかりやすい公認野球規則」(鈴木美嶺・編)です。規則委員会の委員であった故・鈴木美嶺さんによる野球規則の解説本ですが、ルール改正の歴史的背景や事例、どのような考え方に基づく改正だったかなどを詳しく解説している名著です。が、今となっては入手するのは困難だと思います。私が持っているのは1991年版ですが、確か94年版を最後に改訂版は出ていません(故人となられたため)。私も新品を購入したわけではなく、以前野球ルールに関するホームページを運営していた時に、そこを通じて知り合った方が2冊持っているからという事で1冊譲って下さったのでした。ありがたい事です。という事でオススメしても仕方ない本です。残念でした〜(優越感)。
posted by kudakeishi at 10:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 野球雑感